「カカオといえばガーナ」——日本ではそう思われがちです。ガーナの名前を冠したチョコレートが長く親しまれてきたことも影響しているでしょう。

ところが実際には、ガーナは世界1位ではありません。それどころか近年、生産量が数年で半分近くまで落ち込むという深刻な事態が起きています。

この記事では、カカオ豆の生産量ランキングと、いま産地で何が起きているのかを解説します。チョコレートの値上げが続いている理由も、ここを見ると分かります。

カカオ豆の生産量ランキング(国別)

順位 生産量(2024年・概数)
1位 コートジボワール 約189万トン
2位 インドネシア 約63万トン
3位 ガーナ 約53万トン
4位 エクアドル 約40万トン
5位 ナイジェリア 約35万トン
6位 カメルーン 約32万トン
7位 ブラジル 約30万トン
8位 ペルー 約16万トン
9位 コロンビア 約7万トン

※統計の出典や集計年度によって数値は変動します。

コートジボワールの突出ぶりが際立ちます。1国だけで世界のおよそ4割を生産しており、2位インドネシアの約3倍。この一極集中が、後述する価格変動の大きさにつながっています。

なぜ産地は限られるのか — カカオベルト

カカオの木が育つのは、赤道をはさんだ南北およそ20度の地域に限られます。この帯状の範囲をカカオベルトと呼びます。

栽培には厳しい条件があります。

  • 年間平均気温27℃前後で、気温の変化が小さいこと
  • 年間降水量1,000mm以上の高温多湿
  • 直射日光を嫌う — 背の高い木の陰(シェードツリー)が必要
  • 強風に弱く、標高が高すぎても育たない

つまり栽培できる場所を増やせません。需要が伸びても供給を簡単には拡大できない——これがカカオという作物の宿命であり、価格が不安定になる根本的な理由です。

1位コートジボワール — 世界の4割を担う国

西アフリカに位置するコートジボワールは、1970年代以降に生産を急拡大し、世界最大の産地となりました。カカオは同国の主要な輸出品であり、経済の柱です。

ただし、1国への依存度が高い構造にはリスクもあります。この地域が干ばつや豪雨、病害に見舞われれば、世界のチョコレート供給が直接揺らぎます。実際、近年の価格高騰の引き金は西アフリカの天候不順でした。

【深刻】ガーナで何が起きているのか

⚠ ガーナのカカオ生産量は、2021年には100万トンを超えていました。それが2024年には約53万トン——数年でほぼ半減しています。長く世界2位を守ってきた国で起きている、異例の事態です。

原因は一つではありません。複数の要因が重なっています。

① 違法な金採掘(ガラムセイ)

最も深刻とされるのがこれです。ガーナでは「ガラムセイ」と呼ばれる違法な金採掘が広がり、カカオ農園が採掘業者に売却される事態が各地で起きていると報じられています。

問題は農地が減ることだけではありません。採掘の過程で使われる水銀やシアン化物などの有害物質が水系に流れ込み、周辺の農地にも影響が及ぶことが懸念されています。

② 農家の収入が不安定

そもそもカカオ農家の収入は不安定で、決して高くありません。カカオの木は植えてから収穫できるまで数年かかり、しかも収穫は年に限られた時期だけです。

一方、金の採掘はすぐに現金になります。この差が、農地を手放す動機になっていると指摘されています。

③ 病害

カカオ膨張ウイルス病(CSSVD)黒さや病といった病害の被害も拡大しています。特にウイルス病は有効な治療法がなく、感染した木を伐採するしかありません

④ 樹木の高齢化

カカオの木にも収量のピークがあります。ガーナでは植え替えが進まず、老齢化した木が多いことが生産性の低下につながっています。植え替えれば数年間は収入が途絶えるため、農家にとって決断が難しいのです。

⑤ 天候不順と密輸

干ばつや異常気象による不作に加え、近隣国との価格差を利用した密輸も問題になっています。国内の買取価格が周辺国より低ければ、豆は国外へ流れます。契約分を出荷できず納入を先送りする事態も報じられました。

これらが同時に起きた結果が、生産量のほぼ半減です。そしてこれがチョコレートの値上げに直結しています

生産量ランキングと消費量ランキングの決定的な違い

ここで世界のチョコレート消費量ランキングと見比べると、はっきりした構造が浮かびます。

生産する国 消費する国
上位 コートジボワール、ガーナ、インドネシア、エクアドル スイス、オーストリア、ドイツ、アイルランド
地域 アフリカ・東南アジア・中南米 ヨーロッパ
作る国と食べる国が、きれいに分かれています。
カカオ生産国では、チョコレートはほとんど消費されません。農家が自分の育てた豆で作られたチョコレートを食べたことがない——そうした話が語られるほどです。
そして付加価値の大半は、加工・ブランド化を担う消費国側で生まれます。原料を輸出するだけの産地に、利益が十分に還元されにくい。フェアトレードやビーントゥバーといった取り組みが注目されるのは、この構造への問題意識からです。

産地による味の違い

カカオ豆は産地によって風味が異なります。品種の違いに加え、発酵と乾燥のやり方が産地ごとに違うためです。

産地 風味の傾向
ガーナ バランスがよく、いわゆる「チョコレートらしい」王道の風味
エクアドル 花のような華やかな香り。高級チョコに好まれる
ベネズエラ 希少品種クリオロの産地として知られる
マダガスカル 果実のような酸味が特徴的
ベトナム 近年評価が高まっている新興産地

生産量では上位に入らない国でも、「風味で選ばれる産地」として存在感を持つケースがあります。ワインやコーヒーと同じ楽しみ方です。

これからのカカオ

  • 供給は簡単に増やせない — カカオベルトという地理的制約があり、木が育つまで数年かかる
  • 気候変動の影響 — 西アフリカの適地が将来的に縮小するとの予測もある
  • 持続可能性への要求 — 森林減少や児童労働への対応が国際的に求められている
  • 産地の多様化 — 中南米やアジアの新興産地への期待が高まっている

チョコレートが「当たり前に安く買えるもの」ではなくなりつつある——生産の現場を見ると、そう言わざるを得ません。

よくある質問(FAQ)

Q. なぜ日本では「カカオといえばガーナ」なのですか?

A. 日本が長くガーナ産カカオを多く輸入してきたこと、そしてガーナの名を冠したチョコレートが親しまれてきたことが大きいと考えられます。実際、ガーナ産は品質が安定していて日本人の好みに合うとされ、日本にとって重要な産地であり続けています。「世界一の生産国」ではないというだけです。

Q. 日本でカカオは栽培できますか?

A. 露地栽培はほぼ不可能です。カカオベルトの条件から外れるためです。ただし沖縄などで温室を使った栽培の試みはあります。国産カカオのチョコレートも少量ながら存在します。

Q. カカオの値段が上がると、チョコもすぐ高くなりますか?

A. すぐではありません。メーカーは一定期間分の在庫や先物契約を持っているため、価格高騰が店頭に反映されるまでには時間差があります。逆に言えば、相場が落ち着いてもすぐには安くなりません。

Q. チョコレートの原料表示にある「カカオマス」とは?

A. カカオ豆を焙煎してすりつぶしたもので、砂糖を加えていない状態です。詳しくはチョコレートの製造工程で解説しています。

まとめ

  • カカオ生産量1位はコートジボワール(約189万トン)1国で世界のおよそ4割を占め、2位の約3倍
  • ガーナは3位。日本の印象とは異なり世界一ではない
  • ガーナの生産量は2021年の100万トン超から2024年約53万トンへとほぼ半減。原因は違法金採掘(ガラムセイ)・農家の収入不安・病害・樹木の高齢化・天候不順と密輸が重なったもの
  • 栽培はカカオベルト(赤道±20度)に限られ、供給を簡単には増やせない。これが価格変動が大きい根本理由
  • 作る国(アフリカ・アジア・中南米)と食べる国(ヨーロッパ)がきれいに分かれている。付加価値は消費国側で生まれる

関連記事:世界のチョコレート消費量ランキングチョコレートの製造工程なぜ高カカオチョコが値上がりしているのか

あわせて読みたい:カカオ価格の推移と高騰の理由【2026年最新】